*インタビューをお受けいただいた方のご所属・お役職は取材当時のものです。
事業内容を教えてください
全国規模で事業展開する「総合グリーンカンパニー」です。
丸和林業株式会社は昭和26年、パルプの原料となる原木を各地から集荷し、製紙会社に販売する目的で設立されました。昭和37年には山陰地区の製紙会社に原料を供給するため、山陰丸和林業株式会社を設立。やがてパルプの原料は原木から木質チップへと変わり、山陰丸和林業でも事業所とともに木質チップの生産拠点を各地に展開し、文化や生活、産業に欠かせない紙の原料である木質チップの製造販売を行ってきました。
グループ全体としては、木質チップの製造販売だけでなく、山林伐採事業や原木の仕入販売、緑化事業、索道やモノレールの架設作業、堆肥や燃料用樹皮の販売、きのこ栽培用オガ粉の製造、一般貨物自動車輸送事業、産業廃棄物の処理・収集運搬など、幅広い事業を展開してきました。山陰丸和林業株式会社では、平成27年に八頭事業所の操業を開始しました。それまでは鳥取県東部地区では、木質チップの原料となるC材の需要がありませんでしたが、当社の八頭事業所に設備を整えたことで、鳥取県東部地区でのC材の搬出も徐々に増えてきました。
三洋製紙との関わりについて
地元の木質資源を地域で利用するメリットはたくさんあります。
八頭事業所が立ち上がった2年後から三洋製紙のバイオマス発電事業がスタートしました。設備の稼働開始時から木質チップの供給を行っています。当初は少量から取引を開始しましたが、3年後には、取引量は当初の約10倍まで拡大しています。
それまでは、製紙会社も含め、山陰地域では針葉樹のC材を原料とした木質チップの需要が松のチップを除くとほとんどありませんでした。そのため、針葉樹のC材の行き場が地元にはなく、わざわざ県外の製紙会社まで運んでいました。しかし、三洋製紙のバイオマスボイラーが稼働したことで、針葉樹のC材の地元での活用場所が確保でき、輸送費が削減できるなど近い場所へ出荷できるメリットは大きく、取引量が次第に増えていった形です。こういった経緯で八頭事業所では燃料用の木質チップ製造に特化した事業展開ができています。これからも三洋製紙との取引を末永く続け、バイオマスボイラーの安定的な運転に寄与していきたいと考えています。
地元木材を使うメリットについて
未利用材の活用により林業全体の士気が上がってきています。
以前より、鳥取県森林組合連合会の方から「鳥取県東部のB・C材の利用がない」と相談を受けていました。地域としても、どうにかしてB・C材を活用したいと考えておられたんですね。そこで八頭事業所を開設して一緒に鳥取県東部の森林資源を有効に活用していこうということになりました。B・C材のような素材の幅が広がることで、山から切り出せる木材も多くなり、地元林業全体の士気が上がるのではないかと期待されています。
燃料用の木質チップは製紙用とは異なり、C材などの木材だけでなく、間伐や皆伐で出た枝葉や、用材として利用できない木の根元部分も利用できます。これまで山に捨てられていた部分が有効に活用されるのはいいことだと思います。また、個人宅の庭木や果樹の剪定した枝葉も木質チップの原料として八頭事業所で受け入れています。量的にはそれほど多くはありませんが、切った木を近くの事業所に持ち込めば地域振興券を発行するなど、地元の行政の後押しが加われば、不要な枝葉を燃やして処分する野焼きの防止にもなります。
今後の展望について
これまでに培った経験と技術を次世代へとつなげていきます。
これからの林業を担う人材の育成に力を注ぎたいと考えています。丸和林業グループでは、木の文化を絶やすことのないよう、常に山のプロフェッショナルの育成と、林業生産活動の活性化に力を入れています。さらに、新たな取り組みとして、丸和林業グループ傘下の協同組合丸和林材と、ベトナムの森林会社が契約を結び、木材加工業・林業分野での外国人技能実習生の受け入れを開始しようと計画中です。最初は事業所で木材加工について学び、少しずつ林業の現場に出て技術を習得してもらえたらと考えています。
今後、ますます燃料用木質チップの需要は高まると思います。八頭事業所では、製造の体制は既に整っていますが、高まる需要に対応するためには原料を増やす努力が必要となります。木を伐採し、山から運んでくる作業は、経験と高い技術を要します。当社で培ってきた経験や技術を、外国人の技能実習生をはじめ新たな担い手へと確実につなげ、地域の健やかな森林運営につなげたいです。
バイオマス発電の可能性について
林業に“環境産業”という新たな価値を生み出すと期待しています。
木質チップを使ったバイオマス発電は再生可能エネルギーとしてとても期待されています。木は石油や石炭のように限られた資源ではなく、山に苗木を植えればまた木が育ち、何度でも再生できるので永続的に供給が可能です。さらに、脱炭素社会の実現を目指すカーボンニュートラルの実現にも寄与できると注目を集めています。これまでの山から木材を生み出す一次産業としての林業から、エネルギーを供給して持続可能な社会を実現する“環境産業”としての林業という新たな価値観へと生まれ変わろうとしています。
日本は資源がないといわれていますが、国土の約70%を森林が占める森林大国です。当社では、1本の木を無駄なく加工する設備と技術を有しています。つまり、森林資源を活用すれば、資源はたくさんあるということです。では、活用するためにはどうするか。私たちはそこを考え、実現していくことが求められていると思います。そして、うまく活用できれば、林業には無限に広がる可能性があります。これからも「総合グリーンカンパニー」の一員として、この地域の環境を守りながら、経済の活性化にも貢献していけたらと考えています。
インタビュー内で使用されている専門用語について
B材・C材とは、木材を品質(曲がりなどの形状)や用途によって分類する通称です。
- 『 B材 』主に合板などに利用されるもの
- 『 C材 』主にチップ材(製紙用・エネルギー用)として利用されるもの